今から40年ほど前、実家の西軽海町から中海中学校に進学しました。小学校時代にソフトボールで地区優勝したこともあり、迷わず野球部に入部しました。結論から申し上げますと、中学3年間で野球部での良い思い出はほとんどありません。理由は、野球が下手だったからです。少し上手だったソフトボールと野球は全く違いました。守備に入ればエラーはするし、打撃に入れば三振ばかりしていました。その結果、3年間1度も公式試合のベンチすら入ることなく終わりました。上手な2年生が公式戦で活躍しているのを、悔しい想いでスタンドから眺めていた苦い記憶が蘇ります。しかし振り返ってみると、実りのある3年間だったと思います。正確に言うと、実りはありませんでしたが、根を張ることができた時間でした。表舞台の隅にも立てませんでしたが、苦手な分野にも真剣に取り組み、何事からも全力を尽くしました。この経験が今の仕事の礎となっています。
好きなものだけ食べて、好きな人だけと付き合い、好きなことだけする人生は、きっと楽しいでしょう。嫌いなものは食べない、嫌いな人とは付き合わない、嫌いなことはしない人生は、きっと心地良いでしょう。でも、それで本当に人として成長できるでしょうか。誰でも好き嫌いはあります。誰でも得意な分野もあれば、苦手な分野もあります。人としての成長は、苦手な分野でも最大限に努力した時に促されるものではないでしょうか。人は困難に立ち向かい克服した時に、大きく成長します。勉強に真剣に取り組んでいる生徒は、どんな困難にも立ち向かう精神を養います。何事にも自己本位にならず、安直な欲望を抑えて目標に向かって突き進む精神は一生の財産になります。大きな実りを得るためには、大地に深く根を張らなければなりません。中海中学校野球部での3年間は、そのような貴重な経験を得ることができた時間でした。